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ゆっくりと、たっぷり時間を使ってもったい振る銀月と大きな期待を持て余している少年、露鬼はその様子を無表情で眺めている。
「風鬼…瞬光風鬼(シュンコウフウキ)でどうじゃ」
「ふうき?」
「はっはっはっ…そうか!瞬光風鬼!これまた立派な名だな!名に負けぬようにせねばな?ん?風鬼」
心底嬉しそうに笑う露鬼はまるで己の事のように喜び、風鬼は新しく呼ばれる自分の名を何度も繰り返し口に出して呟いている。
「気に入ったか…ならばその名を使ってくれ、いらなければ捨てれば良い…真の名は己が決めるものだからな」
「捨てない!絶対!」
泣き出しそうな声を張り上げて叫んだ風鬼はしっかりと銀月にしがみついて離れようとしなかった。
「気に入られたようだな、銀月」
「らしいな…まぁ、悪い気はしない」
風鬼がくっついたまま、銀月は杯を空けて空を見上げる。
多く瞬く星と消え入る直前の細い月が闇に浮かび、夜風は柔らかく三人を包んで流れていく。
「さぁて、夜が明ける前に帰らねば…風鬼、行くぞ」
「やぁだ~…ぎん~」
「また、月が消え入る直前に来るが良い…風鬼、それまでに少しは男らしくなっておけよ?名に負けぬようにな」
~END~
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