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心の1ピースでもあった実母を失った嫁も有り得ない事実を必死に受け止めて、気丈に振る舞っていたが、泣きながらある事実を話してくれた。 病院で検査を受けていなかった理由 それは…検査を受けたくても実はお金がなかったらしいという事。 嫁の実家は、決して裕福な家庭ではなかったが、年金暮らしで普通に生活出来ると端から見て思えた。 息子や娘からの仕送りもあった為、何も問題が生じる余地はなかった筈だった。 去年、義兄も東京でマイホームを建て、俺も転職の準備や子供達との時間を過ごしたりする為、長期間、無職の状態が続いた。 結論、不定期だった仕送りの回数や金額が極端に減ったわけだ。 どうやりくりしていたのか詳細は、現段階で不明だが余裕はなかったようだ。 にも関わらず、ウチの子供達が行けば、おもちゃやお菓子や洋服を買ってくれたりもした。 おそらく、病院代から出したのかもしれない。 その話を聞いた時は、何かとてつもなく重いものを背負った感じがしたな。 もし、義兄が家を買っていなかったら? もし、俺が転職などせずそのまま、前職で働いていたら? 仕送りを十分に受け取る事が出来て最低でも毎月の定期検診やその都度診療をすることが出来た筈だ…。 今更ああすれば良かったなど言ってもしょうがない事だがな…。 本当なら、嫁は俺の事を責めたいに違いない。 『仕送りが出来る状況だったら、死なずにすんだかもしれないのに!』 そう言いたい筈だ。
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