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「……どういうことだ?」
いつでも殺せるよう身体はそのモーションに入ったまま動かさない。
私の反応に満足しているのか、一層気味悪く笑う司教。怒りに任せて殺してしまおうか迷ったが、一先ず話を聴いておこう。
「そいつはあるユダヤ人だ。君も知っているだろう? 今、ここロンドンではユダヤ人たちの地位は低い。それ故にユダヤ人同士の結束は限りなく強いものになった。そこまでは君も理解しているな?」
「それがどうした。もったいぶらずに言ったらどうだ?」
「ユダヤ人を殺したユダヤ人がいる」
「……だからなんだというんだ?」
わけもわからず訊き返す。どうも理解ができない。
「考えてもみろ。絶対神ヤハウェの下に結束しているユダヤ人が同じユダヤ人を殺したんだぞ? それはつまり、神から離反した無神仰者ということだ。神への想いがどの人種よりも強いであろうユダヤ人が神を捨てた。それはつまり、神になりえる君にも服従しないということだ」
「ヤハウェの忠誠を捨てたのなら私に忠誠を誓わせやすいではないか」
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