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だが、私に屈しない、しかも私に対抗できるほど強いものがいるとなると……もし、私とそいつが対立した場合、街が真っ二つに分かれる可能性がある。神である私の支配が効果を持つのは、私が誰よりも強いという事実の上に成り立つもの。私に対抗できる猛者がいるなら、信者たちはそちらに流れていくかもしれない。
そうなったら、起きることは一つしかない。
戦争だ。それはもっとも愚かで忌むべき所業だ。何も救わないし、何も残らない。
それはまずい。危ない芽は今の内に刈り取っておかなければならない。
そう、そいつを殺めておかなければならない。
「そいつを殺せという依頼なのだな?」
「報酬ははずもうではないか」
司教はやけに嬉しそうな笑みを浮かべた。今にして思うが、そいつを殺して司教に利点があるのだろうか?
「それで、そいつの名前は?」
殺すと決めたら早いうちに行動を起こしたほうがいい。名前を訊きだしたらすぐさま殺しに行ってやろうではないか。
司教の口がゆっくりと開いた。その瞬間、司教はありえない者の名前を口にする。
「驚くなよ? ―――ジャック・ザ・リッパーだ」
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