encounter

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 大学の講義室で、僕は今日も、いつもと同じ日常を過ごしていた。  午前中の講義が終わった大学は非常に慌ただしい。短い昼休みを効率良く送るため、昼食を買いに走ったり、次の講義のための予習をしたりと様々だ。  その様子を横目に見ながら、僕はのんびりとしたものだった。  僕はいつも午後の講義は休んでいる。バイトに行くためだ。  両親のいない僕の場合、高い学費を払うためには大学での大半の時間をバイトに費やさなければならないのだ。当たり前だが、単位が全く足りていない。  そこまでして大学に行く必要ないんじゃないかと学友にはよく言われている。そんなことするんだったら、さっさと就職して稼ぎまくった方がいいんじゃないかと、真剣に心配されていたりする。  正直な話、僕もそのほうが楽で有意義なんじゃないかと思っている。でも、それは僕にとってはやってならないことだ。  大学を卒業するというのは母の願いであった。僕が大学に合格したとき、母は人目もはばからず号泣してくれた。それを見たとき、恥ずかしさが大半を占めていたが、少し嬉しかった。僕に期待してくれていることがわかったから、その期待に応えようと、一心不乱に頑張ろうと決めた。
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