プロローグ

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寒い冬の季節。小動物たちは大人しく土の中で眠っている。 窓ガラスを見ると、真っ白に曇り、近所の子供たちが落書きしたのか、 『あほ』だの『うんこ』などの字がガラスに書かれて、その字が滴るようにたれ、ホラー映画のタイトルのようになっていた。 「おぃアキまだかい!ワレいつもうんこ長いんじゃ!」 バッキバキ便所のドアを蹴る音がして、すこし私は驚いた。 「あ…あほ!もうちょっと待ったれや!驚いて出るもんも出ないやんけ!」 私は前日、友人数名と誕生会といい大量のウイスキーを飲んで、その日は1日中下痢だった。 「かぁ~しみるのぅ。下痢ん時の痔ほど痛いもんはないのぅ。なぁ兄弟」 すると、また便所のドアをバッキバキ蹴り、 「うっさいのぅ、はよ出せや!ワシも入りたいんじゃ!」 この男、私が中学の時からの友人で、名前はサツとゆう。 サツとゆうのはもちろん本名ではないが、亡くなった父が警察官をやっていたことから、幼少のころにサツとゆうあだ名をつけられたらしい。 「アホ!他の便所いったらええやんけ!まだまだ時間かかるわい!」 私は昔から便通が悪く、中学の時、便所に行くといったのは2時間目、帰ってきた時はすでに給食の時間、とゆうことがあったほど、本当に便通がわるいのである。 もちろんその日も朝っぱらから便所に駆け込み、サツとじゃん拳をして見事後だしで私が勝ち、約1時間も汚い便器とにらめっこしているのである。 1時間前すでにもれそうだったサツにはたまったもんじゃないだろう。 「もうええわい!ワシ外でしてくるわい!」 バケツを蹴る音がして、ぶつぶつ言いながらサツは外に出ていった。 「すまんのぅ兄弟…おっおっ出る出る!」 久しぶりに幸せを感じた。 出なかった便が出た時ほどの達成感に勝るものはめったにないだろう。 妻に内緒で泡風呂に行き、店から出てきたおっさんのように、私の顔は笑顔に満ち溢れ、顔はテッカテカだった。 「おぅすまんのぅ兄弟。今終わったど~」 便所からでると、そこの公園の滑り台のとこにサツが倒れていた。 「おい!兄弟!どないしたん!」 私がサツのほうに走りだそうとすると、頭に強烈な激痛が走った。 私は頭を右手で抑え、左手でポケットの中のナイフを取り出した。 「だ…だれじゃい!」
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