第一章 一日の終わり

6/27
前へ
/50ページ
次へ
「顔は洗ったか?ちゃんと母さんに挨拶はしたか?」   「わかってる、わかってる。今からやるよ」  父の言葉に気だるそうに答えながら、俊也はリビングをあとにした。   俊也は洗面所で顔を洗い、階段の左側にある和室へとむかった。 そこにある仏壇の前で、彼は、軽く正座をして両手を合わせた。 目の前の写真の中からは、美しい女性がこっちに向かってニッコリと微笑んでいる。  「おはよう、母さん。今日は特別な日なんだ。これで俺の未来が決まるかもしれないんだぜ。 大げさだと思ってるだろ?でも、それだけ大事なことなんだ。だから見守っててね」  こうやって、一日の始まりに母に語り掛けることは、今では俊也の週間になっていた。 そうすることで、母の存在を自分の中に感じ、いつでも自分を見てくれている気がしたからである。
/50ページ

最初のコメントを投稿しよう!

22人が本棚に入れています
本棚に追加