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俊也の母、神野春奈(かみの はるな)は、まだ彼が小さい頃に重い病にかかり、他界した。
幼い彼にとっては、これほどショックなことはなかっただろう。
以来、彼は男手一つで育てられてきたため、母の愛情を知らなかった。
それでも俊也は、母が好きだった。
その証拠が、毎朝のこの御参りだといえるだろう。
俊也は、目を閉じ、母にもらったわずかなぬくもりを呼び覚まし、感じ、ニッコリと微笑んでリビングへとむかった。
朝食をすませた俊也は、学校へ行く準備をするため二階の自室へと戻った。
部屋に入るなり、俊也はあることに気が付いた。
ベットの近くにある、大切にしていた写真立ての脚が折れ、
中の写真を隠すようにして倒れていたのである。
その写真は、家族三人でとった最後の写真であった。
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