第一章 一日の終わり

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   グラウンドにはアップをすませた生徒たちが監督を待っていた。 広いグラウンドのなかにはひとつその集団が黒い円を描いている以外は、綺麗に整備されていた。   どれくらい時がたっただろうか、いや、実際には10分と待たなかっただろう。 だが、生徒達にとっては妙に長い時間に感じられた。 そのとき校舎のほうからもう一つの黒い集団が歩いてきた。 先頭には赤い帽子をかぶった男がにこやかな笑みを浮かべている。 その後ろには現レギュラーの選手団が引きつれられている。 その中に俊也たちの姿があった。  「やあ、みなさん、こんにちは」  まずは満面の笑みで挨拶をする。これが監督のやり方だ。 本人としては友好的な関係を築こうとしているつもりなのだろうが、 こういう神経質な場面での行動としてはあまりよろしくはない。  だが、少し空気を読めないだけの優しく、理解ある監督なので誰一人嫌な顔一つせず元気な声で挨拶を返す。
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