第一章 一日の終わり

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「はい!」 事をして立ち上がった彼の瞳には、もう不安は消えていた。 自信という名の輝きに包まれて・・。 『ピィーーー』  短一声の笛の音を合図にテストは始まった。 まず最初にボールを持つのは俊也である。 素早いドリブルでゴールへとむかう・・が、彼の前に二人のディフェンダーが立ちはだかった。 その一人は『後方の虎』、北沢 晶である。 「わりぃなぁ、としー。こっから先はいくらお前でも通すわけにゃあいかんのよ」 そう言ったアキラの目は、いつものような人のいい、柔かな目ではなく、まさに、獲物を狙う虎の目であった。 虎は牙を剥き、俊也に襲いかかる・・が、 俊也は右足でボールを前方の空中に揚げ、虎の牙を踏み切った左足でジャンプしてかわし、空に舞うボールを頭で押し、見事にぬいた。   が、しかし、ここであきらめるようでは、もとから虎などという名は付いていない。  虎は瞬時にその鋭い爪を俊也に突き付けた。 そう、虎の爪とはアキラの利き足である右を牙にたとえるのなら、その左である。
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