第一章 一日の終わり

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 彼は最初、右足を俊也の前に滑り込ませるような形で攻めてきた。 が、しかし、それを避けられてしまっては普通は打つ手が無い。 しかし、彼は違う。見かけによらず柔らかな体をうまく使い、 その左足を、股を限界まで広げて、再度ドリブルにかかろうとしていた俊也の足に引っ掛けたのである。 まさに、爪を食い込ませるがごとく・・。   さすがの俊也も、この不意をついた攻撃には耐えきれない。 ボールを前に、引っ掛けられた左足を軸に、前のめりに倒れこみはじめた。  が、しかし、俊也もまた普通ではない。 身体を支えるために出るはずの手はそのまま、その代わりに出てきたのは残る右足である。 右足一本で倒れこんだ身体を支え、なんとか持ち応えはしたが、相当な負担がかかっている。 体勢を保つことで精一杯なのだ。 そこに当然もう一人の二年生ディフェンダーが、こぼれかけたボールを奪いにきた。  だが、まだ俊也の目は死んではいなかった。 瞬時に味方のフォワードの位置を確認。
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