第一章 一日の終わり

21/27
前へ
/50ページ
次へ
案の定、彼についていた一年生のディフェンダーは勝利を確信してか、 奇跡的プレーをやってのけたアキラを尊敬の眼差しで見ていた。 そう、今、彼が見ているものは敵ではない、味方だ。 二年生フォワードはノーマークだ。 そしてフォワードが俊也を信じ、待ち構えている場所、それはゴール前、右サイド45度の位置である。 中央にいる俊也にとって決して届かない距離ではない。 この一瞬が決め手となった。 余裕を見せながら近づいてきた二年生ディフェンダーは、俊也が爪を振り払ったことには気付いていない。 もちろん、一年生も・・。  気付いているのは、振り払われた張本人だけであった。 「まずい、石田、いそげ!!」 そう、アキラが二年生ディフェンダーに叫んだときにはすでに時が遅かった。 自由になった俊也の左足は、こぼれかけていたボールを懇親の力で蹴った。 いや、彼の足がボールを押したといったほうが正しいだろう。 そのボールは、弱々しくスピードを緩めながら進んでいったが、よそ見をしている敵を相手には十分すぎるものであった。 れに合わせて前に出るフォワード。 今、彼の足にボールが到達した・・と、同時に大砲のような音が鳴り響いた。
/50ページ

最初のコメントを投稿しよう!

22人が本棚に入れています
本棚に追加