第一章 一日の終わり

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 キーパーは・・まさか、反応できるはずが無い。 ただでさえ、フリーの選手の懇親の一撃を止めるのは一苦労である。 おまけに、勝利の確信という油断が加われば結果は見えている。  ボールはその勢いを弱めることなく、今もゴールの中でもがいていた。 『ピッピッピィーーー』  テスト終了を告げる笛の音が呆然と立ち尽くす敗者たちの耳に響き渡った。 「ったく、なんつうパスだよ」  力を尽くし、仰向けに寝転がっている俊也に手を差し伸べながら、アキラは言った。 「お前こそ、あんなめちゃくちゃなディフェンスどこで覚えたんだよ、相棒」  差し出された手を取りながら、俊也は答えた。  それから二人は、顔を見合わせて笑った。 合格かどうかはまだ分からない。 しかし、今の二人にとってはそんなことどうでもよかった。  ただ、全力を出し切った今だからこそ、感じられる喜びが二人にはあったのだ・・。
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