第一章 一日の終わり

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 そう、そこは旧国道線との合流地点である。  俊也は足を止め、旧国道線の方を見た。 そこは街灯もなく、そして、車の排気音はもちろん、虫の鳴き声すら聞こえない沈黙の闇が広がっている。 所々にある小さな電球だけがその道を照らす唯一の光だ。  俊也は、その闇にむかってゆっくりと歩き始めた。 確かにこの道を通ればはやく、楽に家に着く。 だが、この時の俊也はほとんど無意識のうちに歩き始めていた。 まるで闇に吸い込まれるかのように・・。   5分程歩いたところで、俊也は不意に立ち止まって空を見上げた。 空は、どうやらもう曇ってはいないらしい。 多少の雲は残っているが、もうすぐその中からお月様が顔を見せてくれそうである。 「俺はレギュラーになれたんだ・・。ありがとう、母さん」  俊也は、感動と感謝の言葉を一人でつぶやいてみたが、その小さな声は、響くことなく闇に飲まれていった・・。   俊也は急に誰に見られているわけでもないのに、虚しさと恥ずかしさを感じ、 頬を赤らめ(暗くて分からないのだが)、はやく家に帰ろうと急ぎはじめた。
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