第一章 一日の終わり

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 彼の部屋は二階にあった。 なんてことはない、ただの狭い空間である。 机と安物の木のベットに場所をとられたその部屋は、実に物置きという言葉が似合うものだった。  だが、そんな中にもきれいに整理された、一本の道があった。 それだけが、この部屋で唯一、人が歩けるスペースである。 壁には、彼のお気に入りのクラブチームのロゴが入ったシャツが飾ってある。 他にも、写真やサイン入りポスター、今では空気も抜け、原型をとどめきれていない、文字の入ったサッカーボール等が飾ってある。 おそらく、ただの物置きではなく、自分自身の部屋だということをアピールしようとした、彼なりの努力の結晶なのだろう。 しかし、残念ながらその物達はよけいに物置きをイメージさせるものにしかなっていなかった。
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