第一章 一日の終わり

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 階段を下りて右にいくと、キッチンとリビングがある。 そこから聞こえる、包丁の規則正しいトン、トンという音が彼を迎えてくれた。 彼は、腹の虫を鳴らしながら、その音に足早に近づいていった。  「おはよう、父さん」  「よう、起きたか、俊也」  俊也の父は、がっちりとした体格で、とてもさわやかな顔をしている。 スポーツマンとは、かくあるべきであるといわんばかりの理想的な体つきと顔立ちだ。 その手に握られている包丁からは、美しいハーモニーが奏でられている。  父、神野良樹(かみの よしき)は今年で40歳になる。 そのわりには若く見え、まだまだ筋肉も衰えておらず、現役の運送屋兼スポーツインストラクターである。
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