一族の血

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そこには巨大なエネルギーの塊があった。 ガツーン、ガツーン金属と金属がぶつかり合う音の中心に塊があった。 男が一人、鎚を振るい大人の身長もある巨大な剣を打っている。 鎚を持つ右腕が左腕より一回り大きい、その右腕の筋肉が収縮、爆発し熱せられた巨大な剣にぶつけられる、その力、エネルギーは確実に剣の形を変えていく。 一打、一打だと打つ度に彼が発するエネルギーは大きく塊になって、異様な空間を作っていた。 二時間は鎚を振るっただろうか、男は剣を水に入れ立ち上がった。 「ふうっ」 発達した筋肉に覆われた肉体だった、体躯も大きく、体のあちこちに闘いでおったであろう傷があった。 男の名はライと言う、父から鍛治の技術を母から闘いの技術を学んだ。 父は最近死んだ、不治の病だった、最後まで一族の悲運を嘆き恨み死んでいった、母は戦争に行っている、傭兵だった。 ライの体の傷は母が殆どつけたものだ、父にも母にも死ぬほど鍛えられた、だから今の自分がいる。 父が死んでから毎日休むことなく鎚を振るった。 自分の意志ではない、血が一族の血が鎚を振るわせ、剣を打たせたと思っている。 自分が一族の血から運命から逃れられないと感じた。一族の怨み、全ては父からの聞かされた、祖父が発見した新しい技術。それは盗まれ一族は父以外殺された、一族、父は滅と自分の一族を呼んでいたが父が死んだ今、滅の血は自分にしか流れていない。 「行ってみるか、親父が死んだのをお袋に知らせないといけないしな」 母がどこにいるかわかっている、戦争のあるところだ 母は戦いで命を実感する人だった、つねに戦っている。 「とりあえずはシンの国にでも行くか、あそこは戦争真っ只中だ。」 旅の準備はしてある。 先程打っていた剣に革製の鞘をし背中にかつぐ 「シンは戦況が不利だって聞いた、お袋は負け戦の乱戦が好きだからな。」 そして彼は山を降りた。
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