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冷や汗が出始めて、手が止まると先輩が
「オイ。俯けよ」
慌ててテーブルに目を落とした。
しばらくじっとしてると、ていうか動けないでいると視線の右端、テーブルのすぐ脇を白い足がすーっと通り過ぎた。
いきなり肩を叩かれて我に返った。
「見たか?」
リングの公開前だったが、のちに見ると高山が街で女の足を見るシーンがこれにそっくりだった。
僕が頷くと
「今のが店員の足が一人分多いっていう、このガ○トの怪談の出所。俺はまるまる見えるんだけどな。顔は見ない方が幸せだ」
なんなんだ、この人。
「早く食べろ。俺嫌われてるから」
俺もわりに幽霊は見る方なんだが、こいつはとんでもない人だとこの時自覚した。
そのあと空港へ向かう山道の謎の霧だとか、先輩お気に入りの山寺巡りなどに連れまわされて、朝方ようやく解放された。
以来俺はその先輩を師匠と仰ぐことになった。
それは師匠の謎の失踪まで続く。
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