~フタ~

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突然の出来事に、私はフタを手にしたまま、裸で立ちつくしてしまいました。 女の人は、呆然とする私に気付いたようでした。 目だけを動かして私を見すえると、ニタっと笑った口元は、お湯の中。 黒く長い髪の合間で、真っ赤に開きました。 『あっ、だめだっ!』 次の瞬間、私は浴槽にフタをしました。 フタの下から 「ゴボゴボ」 という音に混ざって笑い声が聞こえてきました。 と同時に、閉じたフタを下から引っ掻くような音が・・・ 私は洗面器やブラシやシャンプーやら、そのあたりにあるものを、わざと大きな音を立てながら手当たり次第にフタの上へ乗せ、慌てて浴室を飛び出ました。 浴室の扉の向こうでは、フタの下から聞こえる引っ掻く音が掌で叩く音に変わっていました。 私は脱いだばかりのTシャツとGパンを身につけ、部屋を飛び出るとタクシーを拾い、一番近くに住む女友達のところへ逃げ込んだのです。 数時間後・・・
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