火曜日の場合

5/9
前へ
/242ページ
次へ
キーンコーンカーンコーン 『やっべぇ、予鈴鳴っちまった……スピード上げるぞ!?』 『えっこれ以上無理だよぅ……』 限界を訴えるヒナ。 しかし遅刻するわけにはいきません。 仕方なく俺は、彼女を背負い上げ、そして全速力で走りだしました。 『わぁ……もっとスピード上げて♪』 『よおし、しっかり捕まってろよ!?』 風を切るように走ります。 音速から光速へ……そして閉まりかける校門を通り抜けました。 『セーーッフ!!』 教室に入ると同時に叫びました。 当然クラスメイトの視線はこちらに釘づけです。 『今日もお前ら仲良いな?』 あっ……ヒナ降ろすの忘れてた。 クラスの男子はその様子を見て笑います。 『まぁ今日は火曜日だからな』 ヒナをゆっくりと背中から降ろして言いました。 『なんだ、今日はお嬢か……』 お嬢というのはヒナのあだ名です。 確かヒナが執事(俺)に世話されっぱなしのお嬢様のようだ、とクラスメイトの一人が言い出したのが由来だそうです。 ぴったりなあだ名だと思いますが、俺が執事でヒナだけがお嬢様っていうのは納得いきません。 俺にも、もっと知的で格好良いあだ名を付けてほしいものです……。
/242ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1354人が本棚に入れています
本棚に追加