前編◆情けない男と逞しい女

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 小さな田舎町。  その中央で、俺は村人に囲まれながら感謝されている。  感謝された所で、正直嬉しくない。  なぜなら、見渡す限りの男、男、男……華やかな女の姿が一つもないのだ。 「どうもありがとうございました。 では、これが報酬です」  干からびた老人の手から、俺に金貨の入った袋が渡される。  決して多いとは言えない報酬だが、あの程度の下級悪魔ならこれが妥当だろう。 「ど~も、んじゃ俺達は行くんで、さいならぁ」  報酬を貰えば用済みだ。  俺は老人と村人に背中を向けて立ち去る。  村の外に、木にもたれ掛かるようにして立っている女がいた。  今となっては珍しい女で、しかも美人、それでいて大陸最強の剣士であるモナだ。 「ふん、さっさと行くぞ」  いつも鎧を身に纏っているが、戦闘時以外は兜は外している。  燃え盛る炎のような長髪を揺らし、モナは俺に背中を向けて歩き始める。 「たくっ、たまにはお前がこういうメンドイ役をやれよ」 「なんだ、私に文句があるのか?」  無駄に凄い美貌が、邪悪に歪んだ。  文句があるなら殺すぞ、とでも言わんばかりだ。  しかも、俺の実力ではモナに勝つことなど出来ないので、それは冗談ではない。 「暴力女め」 「軟弱男め」  口喧嘩は互角か、いや、モナには一つだけ弱点がある。 「はぁ~、もういい今日は疲れたぜ。 ここいらに村はねぇから、野宿でもしようぜ」 「そうだな、では薪を集めて来い。 あとは食料だ、その辺の森に動物が沢山いるだろうから、捕まえてこい」  自分では何一つやる気が無いところがムカつくが、まぁいい、俺の反撃の布石にしてやる。 「あぁわかった。 モナは休んでいてくれ」  俺の素直な反応に、モナの形のいい眉がつり上がる。 「いやに聞き分けがいいな」 「あぁ、俺は早く今日の疲れを癒すために未来の子供達の姿を見たいんだ。 モナと喧嘩をしてる時間はない」 「貴様っ……その行為は、私から数光年離れた位置でしろ。 そして一々私に報告するな!」  モナの顔が、その髪同様に真っ赤に染まる。  下をうつ向いて、急に声が小さくなる。 「あれぇ、その行為て何かなぁ?」 「そ、その……貴様が、一人で……」 「一人でぇ? どうするのぉ?」 「あの、だからその」  もじもじと必死になっているその姿は、なかなかに愉快である。  モナは、下ネタが大の苦手なのだ。
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