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『るぅおおおお!』
アグニが直撃したスローンデーモンは、大気を震わすうなり声をあげた。
その圧倒的な存在感と魔力に、俺は足がすくんでしまう。
横目で、モナを一瞥すると、あろうことか笑っている。
モナは、戦闘狂だ。
だが、俺ももう完全に腹をくくった。
やるしかない。
「マキ……」
「なんだよ」
せっかく俺が覚悟を決めたのに、無粋なことにモナは俺に話しかけて来やがる。
「鎧、着ていないのだが」
あぁなんだ、そんなことか……
「ちょ、おい! もう降りて来てるぞ」
俺はモナに叱咤しながら、ゆっくりと近付いてくるスローンデーモンを指差した。
「あの巨体で、生身の私が攻撃を受けたら一撃で死ぬな」
「冷静に言うな馬鹿! お前が死ぬのはかまわんが、お前が死んだら確実に俺も殺されるだろ!」
しかし、それでもモナの表情には余裕が浮かんでいる。
「それも、また一興だな」
ニヤリと笑って、モナは肉体強化系魔法“マキシム”を発動、しなやかなモナの筋肉が、隆起の激しい逞しい物と変化する。
そして、軽々しく大剣“ガーウェン”を構える。
「くそっ、マイサンに誓ったんだよ。 こんな所で死ぬわけにはいかない」
俺は後方で、魔方陣を描き始める。
『るぅおおお!』
スローンデーモンの咆哮、と同時に口の辺りに中型の魔方陣が展開される。
俺は咄嗟に、魔方陣に描かれた呪文を読み取り、その魔法の正体を見極める。
「――ッ、避けろモナぁ!」
俺の叫びを書き消すように、電撃系上級魔法“トール”が発動。
自然界で発する雷同様のエネルギーが、文字通り光速で放たれる。
まさか、上級魔法をあんな一瞬で発動させるなんて……
これは並の技術ではない。 人知を超えた存在、悪魔の智力と魔力がなせる技だ。
「ほぉ、いきなり楽しませてくれるじゃないか!」
電撃系上級魔法が直撃したはずなのに、何故かモナの声が聞こえる。
あぁ、きっと空耳だ。
「あと一歩遅かったら、即死だった。 間一髪、あの馬鹿の声が届いてな、飛び退いて良かったよ」
“トール”が落下し、焼け焦げた地面の、ほんの少し後ろにモナが立っていた。
流石に無傷とはいかず、所々を火傷しているが、あの魔法を食らって、これだけの被害ですんでるのは奇跡と言える。
「次は、私の番だ」
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