光陰

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気が付くと 僕は闇の中にいた 闇は 僕が自分で自分の姿が 確認できないくらい深く 今にも僕を 呑み込まんとしていた ここはどこで 僕は誰だろう 分からない 分からない 僕は立ち上がり 手を伸ばしてみるも すぐに壁に当たった 確かめれば 四方に壁があって 僕は身動きがとれなかった どうせ動けないのならば いっそ殺してくれれば よかったのに 僕には今なにができる? 分からない 分からない 不意に光が生まれた その光は 遥か頭上にか細く瞬いて それでもしっかりと輝いた 光が僕に近づくにつれて 僕の輪郭が露になる そして光は 僕を優しく包み込み 僕は闇から解き放たれた やがて 僕は群青色の空のした 遥か地平線まで延びる 草原の上に立ちつくしていた そして 僕の目の前に降り立つ少女 あぁ 君だったんだね そこにたたずむのは 方翼を失った天使 少女は優しく微笑み 僕に自分の姿を 見るのを促した あぁそうか 僕は人間だったんだね そして 僕の背中には翼が片方だけ 付いていた 少女と反対側に 付いていた ありがとう ありがとう 僕はポロポロと涙を流した 少女の微笑みに抱かれ 涙を流した ありがとう 僕は強くなるから 貴女を守れるように 強くなるから それが 僕のできる 生きる証にして 僕の背中には一つの翼 貴女の背中にも一つの翼 僕と貴女で翼は揃ったね 僕と貴女なら どんなに険しい山でも どんなに広い海でも 越えられるよ さぁ 手を貸して 空へ飛び立とう
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