第一章 もう一つの恋

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   陽耶の顔を見ると、切れ長の瞳が私をじっと見つめていた。 「どうした?」  私が聞くと、陽耶は掴んでいる腕の力を強め、私の身体を引き寄せた。 「うあっ!」  私は再び、陽耶の上に倒れこむ。  顔だけ起き上がらせると、目の前には陽耶の顔があり、今にも鼻の先がぶつかってしまいそうな距離だった。  それでも、陽耶はじっと私を見つめている。  なんか、緊張する。  そう思った次の瞬間、私の唇になにかが触れる。  それが陽耶の唇とわかるのに、そう時間はかからなかった。  私は本能的にやばいと判断し、逃げようと腕に力を入れるが、陽耶が腕と頭を抑える力はそれ以上に強く、唇も身体も動かない。 「んんっ」  私は呻き、自由な左手で陽耶の脇腹を殴るが、びくともしない。  次第に私は息が苦しくなり、力が入らなくなっていった。  しかし、ここで口を開ければどうなることかくらいわかっている。だから、断固として口を開けずにいた。  だが、限界がきて私の脳は酸欠状態へとなり意識が朦朧とし始める。  それを察してか、陽耶は力を弱め、唇も離した。  私は陽耶の上に、力なく倒れこむ。 「悠輝!」  陽耶の声が遠くで聞こえ、そこで意識が途切れた。  
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