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陽耶の顔を見ると、切れ長の瞳が私をじっと見つめていた。
「どうした?」
私が聞くと、陽耶は掴んでいる腕の力を強め、私の身体を引き寄せた。
「うあっ!」
私は再び、陽耶の上に倒れこむ。
顔だけ起き上がらせると、目の前には陽耶の顔があり、今にも鼻の先がぶつかってしまいそうな距離だった。
それでも、陽耶はじっと私を見つめている。
なんか、緊張する。
そう思った次の瞬間、私の唇になにかが触れる。
それが陽耶の唇とわかるのに、そう時間はかからなかった。
私は本能的にやばいと判断し、逃げようと腕に力を入れるが、陽耶が腕と頭を抑える力はそれ以上に強く、唇も身体も動かない。
「んんっ」
私は呻き、自由な左手で陽耶の脇腹を殴るが、びくともしない。
次第に私は息が苦しくなり、力が入らなくなっていった。
しかし、ここで口を開ければどうなることかくらいわかっている。だから、断固として口を開けずにいた。
だが、限界がきて私の脳は酸欠状態へとなり意識が朦朧とし始める。
それを察してか、陽耶は力を弱め、唇も離した。
私は陽耶の上に、力なく倒れこむ。
「悠輝!」
陽耶の声が遠くで聞こえ、そこで意識が途切れた。
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