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「……接点が出来る前?」
その言葉が気になり、陽耶に視線を向ける。
「俺らが出会ったのって、かなり前なんだよ」
「え? あの、若山がうちらをわざわざかりだした日じゃないのか?」
入学して間もない日、あの英語教師である若山徹(わかやまとおる)が、私と葵と郁奈を呼び出し、裏庭の掃除をさせた。
なんでこんなことしなきゃならないんだと思っていたら、また二人、そこに連れてこられた生徒がいた。
それが陽耶と蓮だった。
「お前たちはな、校則を破った罰を受けるのだ。はっはっは」
「先生、私、破ってません」
葵が突っ込むと、咳払いをして冗談だよと言った。
「お前たちにはこれから、私の専属パシリになってもらう」
若山は悪びれる様子もなく、そう言う。
「なにそれ」
私たちがブーイングを浴びせると、いやいやと苦笑しながら私たちを宥める。
「その代わり、俺の授業は出なくてもいいからさ、ね」
若山は手を顔の前で合わせ、お願いと言った。
整った顔に似合わず、おもしろいことをする教師だなという印象がある。
実際は、そうパシリの扱いをされることもなく、授業はたまにサボるが、なにも言ってこない。結局、若山の考えはわからなかったが、私たちはある意味では感謝している。
五人が出会えたのは、その集まりのお陰だと思っていたから。
「実は、あの招集は俺が頼んだんだ」
「どういうことだよ」
「俺小学校時代から、悠輝のこと知ってたんだ」
「え? 嘘!?」
信じられなかった。私に陽耶の記憶はない。
「嘘じゃないよ。丁度小学生のころ、俺が入院してたのは知ってるだろ? その病院が、白翼病院なんだよ」
「白翼!?」
白翼病院と言えば、私が通っていた小学校に隣接している病院だ。定期健康診断なんかも、学校でではなくその病院に行っていたほどだ。
白翼病院はかなり有名で、大きな総合大学病院でもあるため、私はかなり印象深かったのを覚えている。
「そこでうちを見かけたの?」
「そう」
陽耶は軽くうなずく。
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