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次に目を覚ますと、もうルームサービスが届いていた。
「よく寝るな」
私が、リビングに当たる部屋へ目を擦りながら出向くと、料理が乗ったテーブルの前のソファーに陽耶が腰掛けながらそう言った。
「ごめん」
咄嗟に謝ると陽耶は左の口角だけを上げ笑う。
そういえば、陽耶が大笑いした様子を見たことがない。いつも左の口角を上げ、静かに笑うだけだ。
そんなことを考えながら、私は陽耶と対面する形でソファーに腰掛ける。
目に飛び込んできた料理に、私は驚いた。
頼んでおいたパスタだけは見慣れた風貌があるが、他の料理は日常生活であまり目にかかれないようなものばかりだ。
ましてや高校生である私には、少し遠い世界の料理に思えた。
「おい」
陽耶が私の顔の前で手を振る。
「あ、いや……すごい料理だなって」
私は、素直に呆気にとられていた事実を話す。
すると陽耶は、またあの笑い方で笑った。
「悠輝は、いちいちおもしろいな」
壷にはまったのか陽耶はしばらく、くすくすと笑っていた。
「あんま笑うなよー」
私は、機嫌を損ねたような口調で言う。
「悪い悪い」
しかし陽耶の表情は悪びれた様子はなく、笑いながら謝るだけだった。
そんなやり取りをしていると、私はさっき起こった出来事が全部夢だったのではないか、と思えてくる。いや、夢であって欲しいと、考えてしまう自分がいるのだ。
それから、私と陽耶の関係が変わった様子はない。むしろ、前より仲良くなったのではないかと私は感じる。
あれから、登下校を一緒にするようになった。そのせいか、内輪以外の生徒から、付き合ってるのかと聞かれることが増えたのも事実だ。
「そんなに、恋人に見えるかなー?」
その日も、何人かの女生徒から質問された。
私はどうしても、そういう質問は男女の友情を否定してる気がして、機嫌悪くそう呟く。
隣では私の歩調に合わせて歩く、陽耶の姿がある。
「俺は全然、そう見えてくれていいけどね」
と、私の独り言に答える陽耶。
あれから陽耶は、たびたび告白めいた言葉をさらりと言うようになった。
「はいはい」
私は平然とした様子で受け流しているが、鼓動は言うことを聞かない。
どうしたんだよ私。いや、この心臓が問題だ。
そんな私をよそ目に、隣で歩く陽耶の表情は、どこか嬉しそうに見える。
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