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いつからだろうか。私が、葵のことを好きになったのは。
そう、あれは、中学時代のことだ。
「聞いた? 葵、彼氏ができたんだって」
郁奈がアイスを頬張りながら、そう言う。
私と郁奈は、コンビニの前の駐車場のタイヤ止めのところに座り込んでいる。
中学二年の暑い夏。葵に、初めての彼氏ができた。
「聞いてる? 葵に……」
「聞こえてる」
私は郁奈の言葉をさえぎる。
それから郁奈の言葉が耳に入ってくることはなく、私はしきりに考えに浸った。
葵に、彼氏が……嘘だろ。
その感情は、哀しいとかいう単純のものではないということだけはわかったが、いったいなぜ、こんな感情が沸いてくるのか訳がわからなかった。
「はっ」
私は気付くと、鼻で笑っていた。
「悠輝?」
「葵に彼氏かー、どんなやつなの?」
私は一切郁奈のことを見ず、目の前の空間を見つめながら、葵を手に入れた奴の情報だけを求めた。
「ほら、あの高校の桔平先輩だよ!」
「桔平? 誰?」
当時女生徒の間で、憧れの存在のとある高校生がいた。
彼は赤毛で、その目に見つめられると、女性なら誰でも落ちてしまうと有名だそうだ。
そういう噂にまったく興味がない私は、郁奈から葵の彼氏だと説明されるまでは、存在すら知らなかった。
そんな奴が、葵の彼氏か。郁奈の話では非の打ち所がないと言うが、信じられない。そんな人間が、この世に存在するのだろうか。
少なくとも、自分の目で確かめるまでは、認めないつもりだった。あんな葵の表情を見るまでは。
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