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『お母さん、元気な女の子ですよ』
アタシの胸元で大きな口をあけて元気に泣く赤ちゃん。
『頑張ったね』
あなたも、アタシも、そしてあの人も……。
分娩室から病室に運ばれる時、廊下にいた主人とアタシの母が駆け寄ってきた。
『よく頑張ったな』
『見た? 赤ちゃん』
『見たよ。それに抱いた。ねぇお義母さん?』
『うん、うん。麻美ちゃん、よく頑張ったね。ありがとう……』
母は涙をハンカチで拭いながら声を詰まらせた。
『私が親になって、おまけに孫まで抱けるなんて夢のよう……麻美ちゃん本当にありがとう』
『お母さん……アタシもありがとう』
『さあ、病室に行きますね』
看護師に促され、主人と母も歩き出す。
『私、もう一度赤ちゃん見てくるわ』
そう言って母は新生児室に向かって歩き出した。
『ホントに嬉しそうだな。お義母さん』
『うん、自分で子供産めなかったけど、ホントに子供が好きなのよ』
母とアタシは血が繋がっていない。
そう、彼女は「育ての母」。
アタシが小学五年生、妹が小学一年生の時、彼女はアタシ達の母になった。
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