3160人が本棚に入れています
本棚に追加
いつだったか、母は綺麗に着飾ってアタシの手を引き、志帆を抱いて家を出た。
たしか、アタシは学校を休んだんだ。
大通りに出てタクシーを拾い、着いたとこは何処だったんだろう?
デパートの前で知らない男に笑いかけた母。
その男も母に笑いながら声をかけ、母に紹介されたアタシにも笑顔で挨拶してきた。
そのあと動物園に行ったんだ。
どうしてこの知らない人と一緒に出掛けてるのか分からなかったけど、動物園が楽しくて深く考えたりしなかった。
それからしばらくして、父と母の声で目を覚ました夜があった。
『どういうつもりなんだ!』
『貴方はいつも留守で私は寂しかったのよ!』
『だからって、こんな事するのかよ!』
『仕方ないじゃない!』
何が原因で喧嘩してるのか分からないアタシは、ただ怖かった。
早く仲直りして欲しいと祈っていた。
それなのに……
仲直りは出来なかったんだね。
母は出て行ったんだもん。アタシと志帆を置いて……。
あの時の男のとこへ。
アタシは顔も覚えてる。
どうしてパパじゃなくてあの男なの?
最初のコメントを投稿しよう!