序章

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 よく、自然が溢れている山へ行ったことを思い出す。空気が澄んでいて、湧き水も美味い。生い茂る木々は生きているかの様だった。    そんな想像を破ると、窓の外には立ち並ぶ建物や淀んだ空気があるのだからやるせない。    やることもなく薄着で携帯を弄る。カーテンは静かに波打ち、扇風機の風は生ぬるい。      最近、政治が激化しているらしい。が、多くの国民は興味が無いだろう。政治のことを知ったって何も変わらない。ちっぽけな一国民なのだから。    政治家は国民の声を聴くと言いながら聴いていないなんてよくあることだ。    もしかしたら国民が非協力的なだけで、政治家は必死に意見を聴こうとしているのかもしれないが、国民にそれが伝わらなければ意味は無い。    多くの人を動かすにはまとまった大きな力が必要なのだ。バラバラの力で国民を動かせる訳が無い。    だからそれぞれの意見を正当化させようとするのだろうが、傍から見ればただ熱く戦っている様にしか見えない。冷静に決められないものなのだろうか。    政治など何も知らない自分が言えたことではないか、と溜め息をつく。    選挙車の騒音が街に響いている。スピーカー越しの騒音は暑苦しさを隠しきれていなかった。実に騒音である。      そんな非協力的な一国民に一通のメールが届く。幼馴染からで、伝えることをたった一行に凝縮した遊びに誘うメールだった。    まだ、日は頂上に昇る途中。
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