第一章

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「テレビ、観てないな?」 「え?」 「話題沸騰中だぞ」    一瞬、しまった。と思う。    拓は最近、どころか高校生になってからあまりテレビを観ていない。高校生になってから買った携帯に夢中なのだ。    携帯では流行の情報が入ってくるサイトにアクセスしている訳でもなく、メールもそんなにしていない。    つまり、拓は政治の熱さ位は知っているが、流行に敏感という訳ではない。どころか全く流行を知らないのだ。   「遅れてるというかなんというか」    小太郎はそう言いながら笑った。人を馬鹿にした笑いだ。    返す言葉は、無い。   「さっさと行くぞ」 「はいはい」    不安よりも足が先走った。    自転車置き場に自転車を止めると、足早に建物の入り口へ向かう。    小太郎の顔が緩んでいる。    話のネタを掴ませてしまったな、と拓は思った。
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