第一章

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 建物の入り口に立つと、自動ドアが音もたてずに静かに開く。    珍しいな、と関心しながら足を踏み入れた。    大抵の自動ドアは音がたつものだが、この自動ドアは音をたてない。高性能だということを語っている。    入り口を見れば建物の中が分かる、とはよく言ったものだ。    真っ白な印象をもたせる明るいホール、カウンターでは正装をした女性の従業員が物静かに仕事をしている。人の密度は少なく、暑苦しさなど微塵もない。    高性能、とは快適というもの。自動ドアと同じでホールは快適な場所だった。    駐車場は車でいっぱいだったんだけどな、と思う。もっと人がいてもいいはず。奥の方は密度が高いのだろうか。   「涼しいな。コンビニに入った気分だぜ」    快適な雰囲気が低度な言葉で崩される。    ホールの中はクーラーが効いていた。   「そうだな、本当に高性能だ」    意地悪く言ってみたつもりだが、小太郎には伝わっていない。    小太郎はカウンターに向かって歩き出した。
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