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それを初めて見たのは
通学途中の横断歩道。
信号待ちしてると、
向こう側に赤い人がいた。
ん?と思った。
もう一度見た。
やっぱり赤い人がいた。
サラリーマンの格好だけど
全身の皮膚が、まっかっか。
血よりずっと濃い赤。
信号が青に変わり、
それはスタスタ近づいてくる。
そして、すれ違う。
歩道を渡り終わると
急に、気味悪さが襲ってきた。
でも、妙だ。
しかめ面してたのは自分一人。
周りの人々はみんな、
何事もなかったように
平然と歩いていた。
少し気の抜けた、普通の顔で。
「流行りのパフォーマンスか
何かだったんだろうな……」
そう自分に言い聞かせ、
いつも通り学校へ向かった。
翌日。
歴史の先生が、
まっかっかになっていた。
教室に入ってくるそれ。
いつも見る顔。
でも、皮膚だけが赤。
真っ赤。
思わず、呆然。
「きりーつ、れい」
委員長が
いつも通りに号令をかける。
周りを見ても、みんな
いつもと変わらない顔してる。
まっかっかに教わる戦国時代は
凄く気持ちの悪いものだった。
翌日。
同級生の谷口さんが、
まっかっかになった。
翌日。
飼っている犬が、
まっかっかになった。
翌日。
おばあちゃんが、
まっかっかになった。
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今日。
朝起きて、テレビをつける。
中の人全員、まっかっか。
ニュース読む人も、
笑えない芸人も、
スマートなモデルも、
一人残らず、全員。
「ごはんできたよー」
そういうお母さんも。
外へ出る。
すれ違う人も、みんなそれ。
人だけじゃなくて、
犬もそれ。
猫もそれ。
蟻もそれ。
世界中の生き物
多分みーんな、それ。
ガラスを見る。――訂正。
自分以外の生き物
多分みーんな、それ。
……そうだ。
ホームセンターに行こう。
そして赤いペンキを
ありったけ、買おう。
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