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「それで水やりに便利なこっちのベッドに移してもらったの」
女性は淡々と語った。
「それで、マキは…?」
「そう、知らないのね…」
女性の顔が暗く沈んだ。
母は嫌な胸騒ぎを覚えた。
女性は意を決したように顔を上げると、口を開いた。
「亡くなりました」
母は泣き崩れた。
「マキ…ごめん、ごめんね」
女性は涙をこらえながらふと、窓の外を見た。
長く長く垂れ下がったつるは、見る間に枯れ、遥か下の地面に落ちた。
そして程なく、掃除係の人に拾われて行った。
澄んだ空に母の声だけが響いていた。
―終―
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