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「えへへ、なんか体つきとかたくましくなってるモンね。
最初は気付かなかったよ~」
「おまえが引っ越してからオヤジに剣術を習いだしたからな。
御剣流剣術はマイトも利用するから、精神修行もやらされるし…
もう毎日ボッコボコだぜ…」
「わあ!マイト、使えるようになったんだ!
属性は?」
「雷。オヤジの資質を継いだらしいわ」
「すごいなあ…ねえ!
でもなんで急に剣術なんて習いだしたの?
たしかシローって…剣術とかって嫌いだったよね?」
「そ…それは…」
志狼は俯く。
そう、志狼はもともと剣術が嫌いだった。
母の命を奪った暴力が大嫌いだった。
ではなぜ、剣術を習いだしたのか。
…それは…
それは、君のことを守れるようになりたかったから。
あのとき。
エリィの手を掴めなかったあの時。
エリィはとんでもない高さから落ちて。
頭から大量の血を流して生死の境を彷徨った。
医者でもあるエリィのお母さんの『風』のマイトで治療したおかげで、九死に一生をえた。
オヤジには、あのプレッシャーをもって
「反省したならそれでいい」
とだけ言われた。
ヘタに怒られるよりきつかった。
「大丈夫。君のせいなんかじゃないさ。すぐに良くなる」
エリィの親父さんの言葉を今でもよく覚えている。
あの後。
すぐにエリィは意識の戻らないまま親父さんの仕事の都合で引っ越してしまった。
あやまりたかった。
でも、エリィは行ってしまった。
せめて一言謝りたかった。
掴めなかった。
君の手をつかめなくてごめんね…
それだけ言いたかった。
毎日泣いた。
見るに見かねてオヤジが、「守りたいものを守れるぐらい、強くなれ。」と剣術を教えてくれるようになった。
「シロー…?どうしたの?」
「えっ!?いや、なんでもねえよ!」
言えるわけなかった。
いざ目の前にすると恥ずかしくなって、志狼は話題をそらした。
「そ…そういや、今日はなんで到着が遅れたんだ?」
「あ…それは…」
『みい~~つけたあ!』
「!?」
「あ!?」
急に今度はエリィが俯いたかと思うと、どこからともなくスピーカーを通したような声が響き、
目の前に壮大に砂埃を立ち上らせて、巨大な人型兵器が立ちふさがった。
「い…遺産兵器…!!!」
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