101人が本棚に入れています
本棚に追加
ガツッ!!
「グッ!!」
「どうしたどうした!動きが鈍いぞッ!!」
「くそッ!!」
ドガガガガガッ!!!
昨日遺産兵器に襲われたばかりだというのに御剣 志狼と御剣 剣十郎は木刀で目にもとまらぬ剣撃の応酬をしていた。
毎朝恒例の御剣家の早朝稽古である。
「いやはや…僕は目で追うのがやっとですがねぇ…」
いつもと違うのは白衣を着て眼鏡をかけ、鮮やかな金髪を頭の後ろで結わえたエリィの父、エリクと
『私を纏うには、かなりの体力を使う。昨日の今日で疲れが出るのは当然だ』
昨日志狼が手に入れた大剣をそのまま小さくした形の短剣から語りかけてくる…
ヴォルネスの存在だった。
「オリャァァァア!!!!」
ドガガガガガッガッガガガ!!
「遅い!!」
ドガァッ!!!!
「グハッ!!」
剣十郎の木刀を脇に受けて志狼は吹っ飛ぶ。
志狼の剣撃はエリクの言うように決して遅くはない。
しかし剣十郎はその攻撃全てを片手でなんなく受け止め、いなし、弾き飛ばす。
実際、剣十郎は先ほどからその場から一歩も動いていなかった。
『体力の限界だ。もうやめておいたほうがいい』
座り込んで荒い息をしている志狼を見てヴォルネスは言う。
「いや…それだけではないな志狼。お前…昨日の戦闘であの盗賊を殺してしまったんじゃないかと思っているのだろう?」
「!!…!」
図星をつかれた志狼は押し黙る。
「安心しろ。奴は爆発の寸前で脱出しておった」
「は…ははは!!そっか!」
言われて志狼はガバッと勢いよく起き上がると、先ほどよりも数段速い剣撃を繰り出しはじめた。
「ハァァアアアア!!!」
ドガガガガガガガガガガ!!
「全然バテてませんねぇ…♪」
『…驚いた…!』
(フッ…それでいい)
剣十郎はかるく唇の端を上げると、チラリと道場の壁に掛かっている時計に目をやる。
(8時…そろそろしまいにするか)
剣十郎はその場から少し距離をおくと、木刀を大上段に構え、
右足を引いて半身になると、木刀を胸の前で水平に志狼に向けてまっすぐ構える。
「あ。やば…」
志狼は慌てて木刀を垂直に立てて防御の体勢を取るが…
ドガアアァァァーーーーーッツ!!!
「え!!!?」
『!!』
エリクが瞬きをする一瞬のうちに、志狼は道場の壁にその身をめり込ませて気絶していた。
「…フウ。これではヴォルネス殿の力を十二分に発揮できんな」
『私を…乗りこなす…』
最初のコメントを投稿しよう!