勇者剣伝ヴォルライガー 第一話『騎士の勇者!!』

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彼等の家には、家事を担う妻、母親といったものがいない。 その昔、剣十郎が関わったある組織との交戦中に、命を落してしまった。 その組織のことに関して、志狼は詳しく聞かされてはいなかったが。 よって家事の一切――掃除、洗濯、食事といったものは全て志狼が一身に受け持っていた。 しかし。 「あのう…まだ動けそうに…」 動きたくても、ダメージが深すぎて、体が言うことを聞かない。 「なにか不満かね…?」 そういうと剣十郎は静かに腕を組み、 異様なプレッシャー放ってくる。 「うっ!!」 志狼はさながら蛇に睨まれた蛙… いや、ゾウに踏み潰される寸前のアリのような気分に陥っていた。 滝のような冷や汗を流しつつ、やっとの思いで言葉をしぼり出す。 「…なんでもありません」 ギギギと、悲鳴をあげる体に鞭打って、志狼はとても素直に食事の準備に取り掛かった。 食卓にはそれは見事な食事が並んでいる。もちろん全て志狼が作ったものだ。 剣十郎が和食派なので御剣家の食事はたいてい和食だった。 「たまにはパンとか食いたい」 と志狼が言ったこともあったが 「何か不満かね…?」 「…なんでもありません。」 このやり取りで全てカタがついてしまう。 食事の用意をしている頃には、志狼はもうケロッとしていた。 さすがに毎日壁にめり込んでいるせいか、恐ろしいほどの再生力だった。 だしの良く効いた味噌汁をすすりながら、剣十郎が何かを思い出したらしく喋りだした。 「おう、そうだ。今日隣の家にベル夫妻と、あの子が帰ってくるぞ」 「ベル夫妻…あの子?」 「忘れたのか?むかしよく遊んでいただろう」 「…!え…ほんとに…帰ってくるのか!?」 「うむ。この近辺には、この家と道路をはさんで反対側のベル家ぐらいしか民家はないからな。 彼等の留守中はワシがご近所ということで、彼等の家の管理をしていただろう? 数日前に連絡が入ったというわけだ」     「な~るほど」 「だが到着が遅れているようだ。 あの子は今日にも学校に通いだすといっていたのだが… もう少し掛かると見て間違いないだろう」
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