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そうか、だからあんな夢を見たのかもしれない。
そう思って、志狼は興奮気味に言った。
「じゃあさ!あいつがくるまで待って…」
「だめだ」
「な…なんでだよ!いーじゃねぇか、学校近いんだし少しぐらい!」
「だめだ」
志狼の発言に対して剣十郎はピシャリと言い放つ。
実は彼の学校は、彼の家から歩いて5分とかからない場所にあるのだが。
「今日は、稽古での気絶時間が若干長かった。
遅刻ギリギリだろう。
新学期が始まったばかりだというのに遅刻は許さん」
「でもさあ!」
「何か不満かね…?」
「…行ってきます」
志狼はとても素直に家をでた。
「おのれオヤジめ・・・」
ぼやきつつ志狼は通学路を歩いていた。
学校までの道は自宅の前を通っている道路一本しかないので
普段は部活に所属していない生徒などがちらほら歩いていたりするのだが、
今日はもう誰も歩いていなかった。
「また『大地』のマイトを持つ大工さん呼ばなきゃな」
すでに伝説となっている500年戦争。
その傷痕はやっと癒え、
1000年かけて廃墟と化した都市も、文明のレベルが旧暦1990年代にまで復興していた。違っている事といえば、
『ドリームミスト』の存在。
秘術(マイト)と呼ばれる精神エネルギーによって様々な形に変化する粒子。
500年戦争中に世界中に散布され、今もなお大気中を漂っている。
誰でも使う事ができるが、精神エネルギーに反応するため、
起こそうとしている事象に見合うだけのの精神力が必要だった。
マイトは個人個人によって大まかに属性わけされており、
火、水、風、土、雷、無属性の6種に大別されていた。
破壊のマイト、修復のマイトなども個人の資質によるのだが、木造の家を直す際には、『大地』のマイトを持つ人間は、大工などにうってつけなのだ。
御剣家は毎日壁を壊すので、大工さんにもうすっかり『お得いさん』扱いされていたりする。
やがて志狼は、岬のうえに建っている岬樹学園に辿り着く。
学園の巨大な校庭には、
一本の樹齢1000年はあろうかという、巨大な木が立っている。
志狼はその木の根元まで歩いて行った。
「あいつが…帰って来る…」
そう。
この木は、志狼の夢に出てきていたあの木だった。
「あいつとよく遊んだあの木…。
あの事件の後、あいつはどっか遠くに引っ越しちまって…。
あいつとよく遊んだここには、学校が建てられることになったんだよな…」
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