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「あ~~!!止まらないいいいい~~!!」
「あれから…何年経ったっけ…」
「あ~~!そこの人!危ないですよ!!どいてくださ~~いい!!」
「5年…いや…10年くらいかな…って、はい!?」
気が付いて首だけ後ろに向けると、急ブレーキをかけた自転車が突っ込んでくる。
その暴走自転車に乗っている女の子は、必死にブレーキをかけるが、故障でもしているのか、志狼との距離はどんどん近づいている。
志狼は避けようと思ったが、なにぶん距離が近すぎる。
おたおたするだけでその場から動けなかった。
(どんくせえぞ俺ッ)
考え事をしていたとはいえ、普段している修行の成果は一体どこへなりを潜めてしまったのか。
必死にブレーキをかける女の子。
その場から動けない志狼。
無常にも、自転車は止まれなかった。
ドガッシャアッ
派手な音を立てて、自転車は志狼の背中に突っ込んだ。
「うわわわ!!」
ぶつかった衝撃で宙に投げ出される女の子。
しかし女の子は猫のようなしなやかさで、空中でクルンッと一回転すると、見事に着地を決める。
「10、0!!」
なんの点かは分からないが、高らかにそういうと
「あ」自分が今ひいてしまった男の事を思い出した。
「あの~…ダイジョーブですか?」
当の男…志狼は自転車を背中に背負って、
樹齢1000年はあろうかという巨大な木と、熱い接吻を交わしている最中だった。
「だらっしゃああああああ!!」
「うっきゃああ!びっくりしたあ!!」
志狼は熱い接吻を切り上げて、自転車をほうり捨てた。
「ビックリしたのは俺の方じゃアホーーッ!!どこ見て運転してんだッ!!」
「ごめんごめん!いや~、転校初日から遅刻はマズイかな~なんて、思いっきり飛ばしてきたからサ!アハハハ」
と屈託のない笑顔で笑う女の子。
「転校生…?」
言ってから志狼は、その女の子を観察する。
確かに真新しい感じの岬樹学園の制服に、お世辞抜きでかなりかわいい、まだどこかに幼さを残す顔。
そして…
キ~ンコ~ンカ~ンコ~ン♪
志狼の思考を、ホームルーム開始を告げるチャイムが遮った。
「わわわ!いっけない!早く職員室に行かなきゃ!!
じゃあ、ほんとにごめんね!!バイバイ!シロー!」
「え?!」
そう言い残すと、女の子は自転車に乗って走り去っていった。
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