勇者剣伝ヴォルライガー 第一話『騎士の勇者!!』

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「あ~~!!止まらないいいいい~~!!」 「あれから…何年経ったっけ…」 「あ~~!そこの人!危ないですよ!!どいてくださ~~いい!!」 「5年…いや…10年くらいかな…って、はい!?」 気が付いて首だけ後ろに向けると、急ブレーキをかけた自転車が突っ込んでくる。 その暴走自転車に乗っている女の子は、必死にブレーキをかけるが、故障でもしているのか、志狼との距離はどんどん近づいている。 志狼は避けようと思ったが、なにぶん距離が近すぎる。 おたおたするだけでその場から動けなかった。 (どんくせえぞ俺ッ) 考え事をしていたとはいえ、普段している修行の成果は一体どこへなりを潜めてしまったのか。 必死にブレーキをかける女の子。 その場から動けない志狼。 無常にも、自転車は止まれなかった。 ドガッシャアッ 派手な音を立てて、自転車は志狼の背中に突っ込んだ。 「うわわわ!!」 ぶつかった衝撃で宙に投げ出される女の子。 しかし女の子は猫のようなしなやかさで、空中でクルンッと一回転すると、見事に着地を決める。 「10、0!!」 なんの点かは分からないが、高らかにそういうと 「あ」自分が今ひいてしまった男の事を思い出した。 「あの~…ダイジョーブですか?」 当の男…志狼は自転車を背中に背負って、 樹齢1000年はあろうかという巨大な木と、熱い接吻を交わしている最中だった。 「だらっしゃああああああ!!」 「うっきゃああ!びっくりしたあ!!」 志狼は熱い接吻を切り上げて、自転車をほうり捨てた。 「ビックリしたのは俺の方じゃアホーーッ!!どこ見て運転してんだッ!!」 「ごめんごめん!いや~、転校初日から遅刻はマズイかな~なんて、思いっきり飛ばしてきたからサ!アハハハ」 と屈託のない笑顔で笑う女の子。 「転校生…?」 言ってから志狼は、その女の子を観察する。 確かに真新しい感じの岬樹学園の制服に、お世辞抜きでかなりかわいい、まだどこかに幼さを残す顔。 そして… キ~ンコ~ンカ~ンコ~ン♪ 志狼の思考を、ホームルーム開始を告げるチャイムが遮った。 「わわわ!いっけない!早く職員室に行かなきゃ!! じゃあ、ほんとにごめんね!!バイバイ!シロー!」 「え?!」 そう言い残すと、女の子は自転車に乗って走り去っていった。
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