『第十四話 魔を討つ、聖風のマイト』

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もう一歩。 あと一息、もう一線で、彼女の目的が叶う。 「剣鬼の盟友、赤眼の魔術師」 「…え!?」 エリィの口から紡ぎ出された言葉に、志狼は驚き、耳を傾ける。 盟友。 その詩は、まさに彼女の理想そのもの。 「命を喰らう魔を討つために、自ら鍛えし風の聖剣、今ここに、我が手に抜き放たん」 左右両翼に、風のマイトが収束していく。 やがてそれは、両翼前に、球状の風の塊として更に収束していく。 同時に、猛黒牙の左腕にも、強大なマイトが集中する。 やはり全身と言わず、大地からも属性エネルギーを集め、集中している。 周囲の石や岩が浮き上がり、ビリビリと震える様を見れば、その攻撃力の高さを窺う事ができる。 しかし、エリィとヴォルペガサスは、それでもなお怯まない。 「風よ、天を駆けよ。闇を切裂き、光をもたらせ」 球状の塊が、光りを放ち始める。 (…負けてない!) 志狼は、両者を見比べる。 猛黒牙から感じる大地のマイトと、エリィが放ち、ヴォルペガサスが増幅した風のマイト。 否。 彼女の放つ、聖風のマイトの強大さは、猛黒牙のそれに、まるで劣らない。 (いや…これは、むしろ…!!) 「必ッ殺!」 ヴォルペガサスは、翼を大きく、後方へと広げる。 ほぼ同時に、猛黒牙の左腕の弓に番えられた矢の輝きが、最高潮に達する。 「風の(Wind)ォッ!!聖剣(Calibur)ぁぁぁぁぁぁぁぁッッ!!!」 翼がはためくと、両翼前の球状の風は竜巻へと姿を変え、猛烈な勢いで直進した。 対する猛黒牙が放った光りの矢は、むしろ光りの柱と形容するに相応しい。 極太のエネルギー破が、竜巻と激突した。 「ぐぅっ!!」 『ぬっ…うううううぅっ!!』 激突の余波が、エリィとヴォルペガサスを襲う。 『やはり…強い!なんというエネルギー量だ…ッ!』 「ぅぅぅぅぅッ!」 エリィは水晶に当てる手に、力を込め、握り締める。 そうでもしないと、余波の反動で後ろへと吹き飛ばされてしまう。 甘かったか。 凄まじい力だ。エリィは、歯を食いしばる。 「…!」 閉じかかっていた視界の端に、志狼の背中が映る。
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