101人が本棚に入れています
本棚に追加
もう一歩。
あと一息、もう一線で、彼女の目的が叶う。
「剣鬼の盟友、赤眼の魔術師」
「…え!?」
エリィの口から紡ぎ出された言葉に、志狼は驚き、耳を傾ける。
盟友。
その詩は、まさに彼女の理想そのもの。
「命を喰らう魔を討つために、自ら鍛えし風の聖剣、今ここに、我が手に抜き放たん」
左右両翼に、風のマイトが収束していく。
やがてそれは、両翼前に、球状の風の塊として更に収束していく。
同時に、猛黒牙の左腕にも、強大なマイトが集中する。
やはり全身と言わず、大地からも属性エネルギーを集め、集中している。
周囲の石や岩が浮き上がり、ビリビリと震える様を見れば、その攻撃力の高さを窺う事ができる。
しかし、エリィとヴォルペガサスは、それでもなお怯まない。
「風よ、天を駆けよ。闇を切裂き、光をもたらせ」
球状の塊が、光りを放ち始める。
(…負けてない!)
志狼は、両者を見比べる。
猛黒牙から感じる大地のマイトと、エリィが放ち、ヴォルペガサスが増幅した風のマイト。
否。
彼女の放つ、聖風のマイトの強大さは、猛黒牙のそれに、まるで劣らない。
(いや…これは、むしろ…!!)
「必ッ殺!」
ヴォルペガサスは、翼を大きく、後方へと広げる。
ほぼ同時に、猛黒牙の左腕の弓に番えられた矢の輝きが、最高潮に達する。
「風の(Wind)ォッ!!聖剣(Calibur)ぁぁぁぁぁぁぁぁッッ!!!」
翼がはためくと、両翼前の球状の風は竜巻へと姿を変え、猛烈な勢いで直進した。
対する猛黒牙が放った光りの矢は、むしろ光りの柱と形容するに相応しい。
極太のエネルギー破が、竜巻と激突した。
「ぐぅっ!!」
『ぬっ…うううううぅっ!!』
激突の余波が、エリィとヴォルペガサスを襲う。
『やはり…強い!なんというエネルギー量だ…ッ!』
「ぅぅぅぅぅッ!」
エリィは水晶に当てる手に、力を込め、握り締める。
そうでもしないと、余波の反動で後ろへと吹き飛ばされてしまう。
甘かったか。
凄まじい力だ。エリィは、歯を食いしばる。
「…!」
閉じかかっていた視界の端に、志狼の背中が映る。
最初のコメントを投稿しよう!