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「!」
仁王立ちのまま、微動だにしていない。
ウィンドウに映る彼の表情は、無表情にも近い。
不安など微塵にも感じていない。
(…負けられないっ!)
負けてたまるか。
こんな事で、引き下がっていられない。
「わ…我が手に輝く聖剣よ…!」
『!追加詠唱か…!?』
エリィの呪文に応じて、二連の竜巻が混ざり合い、螺旋回転力を上げていく。
激しくうねり、竜巻は光りの柱に穴を穿っていく。
「大地を穿ち、海を割り、天を切り裂け…っ!!」
トドメとばかりに、ヴォルペガサスの胸部付近に、超圧縮された風の塊が精製される。
「我が剣に…っ!斬れぬ物無しッ!!」!
翼がはためき、風の塊が発射される。
塊は竜巻のレールを走り、最大加速、極限圧縮される。
竜巻を突き破り、放たれた風の塊は、易々と光りの柱を打ち破り、猛黒牙を粉砕するに留まらず、コロシアムの壁面を深々と切裂き、大地に深い溝を穿つ。
「…すげぇ…!」
ヴォルペガサスが放った一撃は、大閃光弓を猛黒牙もろともに吹き飛ばし、コロシアムを大地ごと撃ち抜いた。
底の見えない亀裂は、まるで途方もなく巨大で、鋭利な剣を用いて斬りつけたかのようだった。
「これが…術士のマイトの威力かよ…!」
志狼は本格的な術は、生まれて初めて見た。
どちらかと言えば術者寄りであるユマは、至る所で術を使用しているが、これほどの大規模な破壊は見たことが無い。
剣士には真似できない、広範囲、高威力の破壊力。
『聞こえるか、志狼』
「!ブリットか」
突然、ブリットから通信が入る。
『凄まじいマイトと振動を感知したのだが、無事か。そちらに猛鋼牙のコピー体が向かったが…』
苦笑いしながら、志狼は答える。
「…片付いたよ。凄まじいマイトの反応ってのは、エリィのマイトだろうよ」
『え!?』
『…やはりな』
驚くユマに対して、ブリットは予測していたのか、納得していた。
『ともあれ、ギアアークに戻って来い。全機集合した後に、速やかに撤収するぞ』
「…分かった」
志狼は、巻き上がる土埃のなか、こちらを見失わずに見上げてくるヴォルガイアーを一瞥する。
が、構わずそのまま転進する。
翼を広げ、ヴォルペガサスは元来た方向へと、飛翔した。
「鈴、無事か」
『はいはい、無事ですよっ』
Gウォッチから聞こえる鈴の声は、元気そのものだった。
「回収する。場所は、さっきの所から離れていないか?」
『あー、自力で水衣姉達と合流しますので、お構いなくお先にどうぞ!』
少々心配だったが、今の今まで無事だった事を考えれば、鈴の実力はかなりのものなのだろう。
「分かった。気をつけて合流しろ」
『はい!』
「…さて、と」
飛びながら、志狼は拳を握り締める。
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