『第十四話 魔を討つ、聖風のマイト』

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Gウォッチの通信を切り、鈴はホッと一息ついた。 「良かった」 そして、正面に目を向ける。 「…」 対峙している忍び装束の少女--ココロはずっとコロシアムの方向を見たまま動きを見せない。 が、ゆっくりと視線をこちらに戻した。 「…どうやら、状況が完全にひっくり返ったみたいね」 「そうらしいねぇ」 鈴は、ふふんと鼻で笑いながら、手に持っていた槍を放り投げる。 槍は複数枚の符と水に姿を変え、地面に落ちた。 「残念だったわね…大した活躍も出来ずに」 「はぁ?」 嘲るココロだったが、 「何言ってんの、あんた」 バカじゃないの、と付け加え、鈴はココロに背を向けた。 「私の役割は、あんたをここで足止めさせること。…目的は果たしたわ」 「何を言って…。…っ!?」 鈴の意図に気付き、ココロは頬を赤く染め、拳を握り締めた。 鈴は、ココロが陸丸の前に立ち塞がる、という状況を阻止するためだけに、接触したのだ、と悟った。 「あんたがあいつの目の前に現れるのは…、あいつにとって、致命的だからね」 「私との戦いは、単なる時間稼ぎだったわけ…!?」 「ま、そういうコト。もうその必要なくなったし、帰るわ」 スタスタと歩き始める鈴の背後で、ココロは両手にクナイを出現させ、握り締める。 「舐められたものだわ…!もしかして、手加減でもされていたのかしらね…!?」 「あんた、私の姿見て同じこと言える?」 「!」 鈴は苦笑いして、手を広げた。彼女の服装は、ボロボロだった。 「余裕ないっつうの」 とはいえ、ココロ自身の忍び装束もボロボロなのだが。 「いや~、私もケガらしいケガしてないから、てっきりあんたこそ手加減してるもんだと思ってたけど」 「!何を…バカな事…!」 「あ、隙あり」 「っぷっ!」 ココロの額に、符が一枚張り付き、視界を塞ぐ。 すると同時に、ココロの体の傷が癒えていく。 「…!このっ!」 符術による治癒だと理解した瞬間、ココロは符を引き剥がし、鈴を睨み付けるが、既に彼女は姿を消していた。
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