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Gウォッチの通信を切り、鈴はホッと一息ついた。
「良かった」
そして、正面に目を向ける。
「…」
対峙している忍び装束の少女--ココロはずっとコロシアムの方向を見たまま動きを見せない。
が、ゆっくりと視線をこちらに戻した。
「…どうやら、状況が完全にひっくり返ったみたいね」
「そうらしいねぇ」
鈴は、ふふんと鼻で笑いながら、手に持っていた槍を放り投げる。
槍は複数枚の符と水に姿を変え、地面に落ちた。
「残念だったわね…大した活躍も出来ずに」
「はぁ?」
嘲るココロだったが、
「何言ってんの、あんた」
バカじゃないの、と付け加え、鈴はココロに背を向けた。
「私の役割は、あんたをここで足止めさせること。…目的は果たしたわ」
「何を言って…。…っ!?」
鈴の意図に気付き、ココロは頬を赤く染め、拳を握り締めた。
鈴は、ココロが陸丸の前に立ち塞がる、という状況を阻止するためだけに、接触したのだ、と悟った。
「あんたがあいつの目の前に現れるのは…、あいつにとって、致命的だからね」
「私との戦いは、単なる時間稼ぎだったわけ…!?」
「ま、そういうコト。もうその必要なくなったし、帰るわ」
スタスタと歩き始める鈴の背後で、ココロは両手にクナイを出現させ、握り締める。
「舐められたものだわ…!もしかして、手加減でもされていたのかしらね…!?」
「あんた、私の姿見て同じこと言える?」
「!」
鈴は苦笑いして、手を広げた。彼女の服装は、ボロボロだった。
「余裕ないっつうの」
とはいえ、ココロ自身の忍び装束もボロボロなのだが。
「いや~、私もケガらしいケガしてないから、てっきりあんたこそ手加減してるもんだと思ってたけど」
「!何を…バカな事…!」
「あ、隙あり」
「っぷっ!」
ココロの額に、符が一枚張り付き、視界を塞ぐ。
すると同時に、ココロの体の傷が癒えていく。
「…!このっ!」
符術による治癒だと理解した瞬間、ココロは符を引き剥がし、鈴を睨み付けるが、既に彼女は姿を消していた。
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