『第十四話 魔を討つ、聖風のマイト』

37/38
前へ
/821ページ
次へ
「ココロ様、ご無事ですか」 「…アルか」 砕けた鎧を身に付けた、狐の妖魔が姿を現した。 「コロシアムの方はどうした。あちらを見ていろと命じたはずだが」 「あのヴォルペガサスという鎧は、既に飛び立ちました故、先ずはココロ様の無事を確認しようと思い、馳せ参じました次第」 「ケガなどするかっ!あいつ相手に!」 「む」 口元に符を貼り付けられ、押し黙るアルフォクスだったが、直後流れ込んでくる水のマイトが、彼の傷を癒していく。 「これは…あの半妖の少女の術ですね」 「…」 ココロは答えない。 「なるほど。これは…我らの完全敗北ですな」 ギロリと、アルフォクスを睨みつけるココロ。 「報告するのが少々怖ろしいのですが、一応」 「言ってみろ」 「ここまで敵の侵攻を受けながら、我らには死者は一人たりとも出ていません」 「!!…な、あ」 「言うまでもなく、被害は甚大ですが」 倒壊した建造物や、撃墜されたイヴィルイレイザーの数、猛黒牙や黒龍の大破。 コロシアムや周囲の損壊は、目も当てられない。 しかし、そこまで破壊しておいてなお、死者はゼロ。 「…っ、はぁ…!」 確かに、完全にしてやられている。呆れ混じりに、ココロは肩を落とした。 『聞こえているか、ココロ。アルフォクス』 「!」 「カイン、様」 突然の念話に、両者ともに肩を跳ね上げた。
/821ページ

最初のコメントを投稿しよう!

101人が本棚に入れています
本棚に追加