『第十五話 剣の継承』

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「無事か、テメェ等」 「それはこちらの台詞だ」 猛鋼牙とウォルフルシファーの傍らに降り立つヴォルペガサス。 志狼の方から無事を確認したはずが、呆れ混じりにブリットに切り替えされた。 「無事ですか、三人とも!ヴォルネスさん、違和感や異常はありませんか!?」 『あ、ああ。もう問題ない』 ユマに矢継ぎ早に尋ねられ、ヴォルペガサスは苦笑いで応える。 「すごいや…、あの偽物たおしちゃうなんて!」 賛辞を送る陸丸に、志狼は苦笑いで手をヒラヒラ振った。 「いや、奴らもうお前らと戦って、随分消耗してたからな。動きが鈍ってたよ」 「そんなに甘っちょろい相手なら苦労ねぇよ」 「!拳火か」 音もなく、紅麗と蒼月が3機と合流した。 蒼月の手のひらの上で、鈴がヒラヒラと手を振っているのが見え、志狼はホッと胸をなで下ろした。 「あの偽物…生半可な強さじゃなかったわ。流石は初代、と言ったところかしら」 「…ユマ、2人の状態をチェックしてやってくれ」 「は、はい?」 「動きがぎこちない。どっか故障してるはずだ」 「!」 『あらら、鋭い』 『見抜かれたな、拳火』 「分離した状態で、見抜かれるも何もねぇだろ」 「…ちっ」 蒼月や紅麗の言葉に、拳火は舌打ちした。 「しっかり看てもらえ。…特に、左腕をな」 「!」 後半は小声で、志狼は拳火の左腕に軽く触れた。 「っつ!」 軽く触れただけだというのに、拳火は身を堅くした。 かなり鋭い痛みが走った筈だが、しかし彼は上がりそうになった悲鳴を飲み込んだ。 「何した」 見たところ、蒼月も同じ箇所を損傷している。だが、拳火ほどの負傷はしていない。 その上で、痛みを我慢している。恐らくは、あの水衣に知られたくない事。 もしくは、知られてはならないこと。 拳火が水衣に隠し事をするなど、よほどの事態だ。 「…双龍の真髄を見た」 「!マジか」 「ああ。失敗すると分かってたんだが、追い込まれて咄嗟に使っちまった。…その結果が、このザマだ」 「…それって、ひょっとして…」 「ああ。前に博士がビジョンで言っていた、紫龍の本当の力って奴…あの黒龍の姿形に関係があるんだろうぜ」 『…』 非難めいた拳火の言葉に、紅麗は無言で答える。 拳火同様、紅麗が沈黙を決め込むのは、やはりそれなりの事情があるのだろう。 「そうだな、帰ったら、その辺まとめて話しすっか」 「帰ったら…、か」 拳火は苦笑いした。 彼は今まで、帰還の事を極力考えないようにしていた。 恐らくは無事では済まないだろう、と。決死の覚悟を固めてここまで来た。 しかし、死の寸前まで追い詰められた筈なのに、何故この男の方が、当然の様に後のことまで口に出来るのだろうか。 「…たく…。だからお前といると、負ける気がしねぇんだよ」 ボソリと、拳火は呟く。 カインにあれだけボロボロにされたというのに、何故か敗北感を感じない。 それは恐らく、志狼のその気迫や思考に、自分が強く引かれているからなのだろう。
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