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「勇者、ヴォルペガサス」
『!』
ヴォルガイアーが、ヴォルペガサスを指差す。
「貴様に、決闘を申し込む」
「な…」
「なにぃ…?」
水衣と拳火は、眉根を寄せる。
「決闘って…どういう事?」
『タイマンで真っ向勝負、って事かぁ?今更』
カインの意図が読めずに、ただただ困惑する陸丸と猛鋼牙。
「…カイン。マリアは…こんな事望んでいない。決闘など馬鹿げている」
「…ブリットさん」
『ブリット…』
言った。
恐らくは、彼の最大のトラウマ。そこに、あえて踏み入った。
結果、カインが激怒しようとも、友であるブリット自身が口にしなければならない言葉を、伝えた。
「…」
しかし、カインはブリットの予想に反して、全くの無反応だった。
(…カイン…?)
彼の真意が分からない。
ブリットは歩み寄り、間近で声を掛けようとしたが、ヴォルペガサスにそれを制された。
「こっちゃ3人掛かりになるが、文句はねぇだろうな」
「俺は『ヴォルペガサス』、と言った」
腕を下ろし、ヴォルガイアーが妖魔勢の中から歩み出る。
「ハナっからそのつもりってことだな…上等だこの野郎」
「志狼!」
併せて前進しようとしたヴォルペガサスの肩を掴み、ブリットは声を荒げた。
「何故戦いを肯定する!不殺を指示したのは、他ならぬ貴様だろう!?これ以上の戦いは無意味だ!!」
肩に置かれたウォルフルシファーの手が、僅かに震えている。
千年越しに再会した友との、避けられない戦い。
身を裂かれるような、辛い思いでブリットは今、この場に立っているのだろう。
そんな彼に言い聞かせるように、志狼は、静かに、はっきりと言い放つ。
「意味ならある。…超えなきゃならないんだ」
「!」
「エリィは、勇者を受け継ぐ決意をした。…俺もそうだ」
『リンク開始!』
志狼とヴォルペガサスが、一体となる。
腰からせり出した柄を握りしめ、
「だから口で言っても分からない、暴走する悪党を…」
一気に引き抜く。
「止める!この剣で!!」
柄に天馬の尾が装着され、風の聖剣ペガスキャリバーが顕現する。
『友であれば尚、捨て置くわけにはいかない!頼む、ブリット…戦わせてくれ!』
「…」
ブリットは逡巡した後、ヴォルペガサスの肩に置いていた手を解放した。
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