『第十五話 剣の継承』

5/24
前へ
/821ページ
次へ
「勇者、ヴォルペガサス」 『!』 ヴォルガイアーが、ヴォルペガサスを指差す。 「貴様に、決闘を申し込む」 「な…」 「なにぃ…?」 水衣と拳火は、眉根を寄せる。 「決闘って…どういう事?」 『タイマンで真っ向勝負、って事かぁ?今更』 カインの意図が読めずに、ただただ困惑する陸丸と猛鋼牙。 「…カイン。マリアは…こんな事望んでいない。決闘など馬鹿げている」 「…ブリットさん」 『ブリット…』 言った。 恐らくは、彼の最大のトラウマ。そこに、あえて踏み入った。 結果、カインが激怒しようとも、友であるブリット自身が口にしなければならない言葉を、伝えた。 「…」 しかし、カインはブリットの予想に反して、全くの無反応だった。 (…カイン…?) 彼の真意が分からない。 ブリットは歩み寄り、間近で声を掛けようとしたが、ヴォルペガサスにそれを制された。 「こっちゃ3人掛かりになるが、文句はねぇだろうな」 「俺は『ヴォルペガサス』、と言った」 腕を下ろし、ヴォルガイアーが妖魔勢の中から歩み出る。 「ハナっからそのつもりってことだな…上等だこの野郎」 「志狼!」 併せて前進しようとしたヴォルペガサスの肩を掴み、ブリットは声を荒げた。 「何故戦いを肯定する!不殺を指示したのは、他ならぬ貴様だろう!?これ以上の戦いは無意味だ!!」 肩に置かれたウォルフルシファーの手が、僅かに震えている。 千年越しに再会した友との、避けられない戦い。 身を裂かれるような、辛い思いでブリットは今、この場に立っているのだろう。 そんな彼に言い聞かせるように、志狼は、静かに、はっきりと言い放つ。 「意味ならある。…超えなきゃならないんだ」 「!」 「エリィは、勇者を受け継ぐ決意をした。…俺もそうだ」 『リンク開始!』 志狼とヴォルペガサスが、一体となる。 腰からせり出した柄を握りしめ、 「だから口で言っても分からない、暴走する悪党を…」 一気に引き抜く。 「止める!この剣で!!」 柄に天馬の尾が装着され、風の聖剣ペガスキャリバーが顕現する。 『友であれば尚、捨て置くわけにはいかない!頼む、ブリット…戦わせてくれ!』 「…」 ブリットは逡巡した後、ヴォルペガサスの肩に置いていた手を解放した。
/821ページ

最初のコメントを投稿しよう!

101人が本棚に入れています
本棚に追加