『第十五話 剣の継承』

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「…っ」 「どうした、手が震えてるぜ」 「!」 拳火の指摘に、陸丸は我に返り、自らの拳を見つめた。 「無理もねぇが…。今一番恐怖を感じてンのは、今正面きって構えてる志狼だ。違うか?」 「そう、ですね」 「…見てるだけの俺達がビビってどうする…!」 「…拳火」 同じく震える拳火の右拳に、水衣が手を添える。 「…信じましょう。志狼を」 「…ふぅぅ…」 志狼は、深く息を吐き出した。身体が、鉛のように重い。 手足を動かせば、まるで油でも切れたかのように、ギシギシと悲鳴を上げる。 マリアの施した治療は、怪我を塞ぐに留まり、体力までは回復しなかったようだ。 (…いや、こうして立ってられるだけで十分だろ) むしろ、いつも通りと言える。 生きていれば、戦える。それでいい。 (ここが…正念場だ) 自前の残りマイトは、とっくに枯渇している。 エリィの聖風のマイトのおかげで、戦う力はカバー出来ているが、 マイトの枯渇は、元となる体力と精神力の限界を意味している。 後、1・2回の攻防で、決着が着くだろう。 勝つにせよ、負けるにせよ。 (…いいや) 負けない。 負けられない。 (絶対に…、勝つ!) グワッ 「!」 黒い雷が、ガイアーブレードを起点に、ヴォルガイアーの後方に流れ始める。 「…」 とてつもないプレッシャーが、志狼の体を、心を襲う。 嫌でも甦る、敗北の記憶。 (…いいや…!違うっ!) ぺガスキャリバーを握る手に、力が篭る。 (あれは…勝利のための布石だ!!) そう。 全ては、この一瞬のために。 ビリビリと高まる恐怖は、カインの攻撃のタイミングを、いち早く察知する最上のセンサーになる。 そしてこの身を賭して、技を受けた事によって、カインの必殺技『キング・レオ・ブレイク』の攻略法を… 志狼は見出していた。 「…頼むぜ、ヴォルペガサス…!俺に合わせてくれ…!!」 問題は、それが上手くいくかどうか。 タイミングを僅かにもミスすれば、先の二の舞である。 今度こそ、確実に死が訪れるだろう。 『了解…ッ!』 志狼の覚悟に呼応し、ヴォルペガサスは全霊を志狼と同調する。
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