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「…っ」
「どうした、手が震えてるぜ」
「!」
拳火の指摘に、陸丸は我に返り、自らの拳を見つめた。
「無理もねぇが…。今一番恐怖を感じてンのは、今正面きって構えてる志狼だ。違うか?」
「そう、ですね」
「…見てるだけの俺達がビビってどうする…!」
「…拳火」
同じく震える拳火の右拳に、水衣が手を添える。
「…信じましょう。志狼を」
「…ふぅぅ…」
志狼は、深く息を吐き出した。身体が、鉛のように重い。
手足を動かせば、まるで油でも切れたかのように、ギシギシと悲鳴を上げる。
マリアの施した治療は、怪我を塞ぐに留まり、体力までは回復しなかったようだ。
(…いや、こうして立ってられるだけで十分だろ)
むしろ、いつも通りと言える。
生きていれば、戦える。それでいい。
(ここが…正念場だ)
自前の残りマイトは、とっくに枯渇している。
エリィの聖風のマイトのおかげで、戦う力はカバー出来ているが、
マイトの枯渇は、元となる体力と精神力の限界を意味している。
後、1・2回の攻防で、決着が着くだろう。
勝つにせよ、負けるにせよ。
(…いいや)
負けない。
負けられない。
(絶対に…、勝つ!)
グワッ
「!」
黒い雷が、ガイアーブレードを起点に、ヴォルガイアーの後方に流れ始める。
「…」
とてつもないプレッシャーが、志狼の体を、心を襲う。
嫌でも甦る、敗北の記憶。
(…いいや…!違うっ!)
ぺガスキャリバーを握る手に、力が篭る。
(あれは…勝利のための布石だ!!)
そう。
全ては、この一瞬のために。
ビリビリと高まる恐怖は、カインの攻撃のタイミングを、いち早く察知する最上のセンサーになる。
そしてこの身を賭して、技を受けた事によって、カインの必殺技『キング・レオ・ブレイク』の攻略法を…
志狼は見出していた。
「…頼むぜ、ヴォルペガサス…!俺に合わせてくれ…!!」
問題は、それが上手くいくかどうか。
タイミングを僅かにもミスすれば、先の二の舞である。
今度こそ、確実に死が訪れるだろう。
『了解…ッ!』
志狼の覚悟に呼応し、ヴォルペガサスは全霊を志狼と同調する。
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