『第十五話 剣の継承』

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「!何ィ…!?」 ぺガスキャリバーから、聖風のマイトが発生する。 剣から発生した風は、後方へと流れていく。 その力の流れは、やはりヴォルガイアーと同じものだった。 「ヴォルペガサスの風で、キング・レオ・ブレイクを真似るつもりか…!?」 「…」 カインの問いに、志狼は答えない。 剣先をヴォルガイアーの目線の高さに上げ、鋭い目付きで睨みつける。 掛かって来い、と。その目は雄弁に語っていた。 「よかろう…。その程度の付け焼刃など、この獅子の牙にはなんら無力である事を、教えてやるッ!!!」 暴れ狂う黒の雷が、獅子の鬣を連想させるように暴れまわる。 「…砕け散れッ!」 漆黒の獅子が、荒ぶる牙を剥く。 「キングッ!レオッ!!ブレイクーーーッッ!!!」 ヴォルガイアーが、黒い巨大な弾丸が、ヴォルペガサス目掛けて迫る。 「!避けない!のか!?」 ブリットは驚愕して、目を剥いた。 『馬鹿な…!!自殺行為だ』 さしものウォルフルシファーも、狼狽せざるを得ない。 大地を抉りながら迫るヴォルガイアーを目の前にして、ヴォルペガサスは、ペガスキャリバーを構えたまま動かない。 「避けて下さい!!」 ユマは声を張り上げた。 飛翔すれば、回避出来る可能性があるものを。 「…っ!」 水衣は、声も上げられない。 拳火の右手に添えていた手に、思わず力がこもる。 ゴシャアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!! ヴォルペガサスが、錐揉み回転しながら、上空に向かって跳ね飛ばされる。 「…っ!!あ…っ!!あああ…!!!」 陸丸は呼吸を忘れてしまったかのように、口をパクパクと動かし、顔からは血の気が引いていく。 翼からもぎ取られた羽や、砕けた装甲が、次々に地面に向けて落下してくる。 『…ッ!!リーダーッ!!』 見紛うはずもない。猛鋼牙の視界に映るそれらは、間違いなくヴォルペガサスの物だ。 これではまるで、先の戦いの再現ではないか。 「…」 突き抜けたヴォルガイアーは、無言でガイアーブレードを、血払いするように一振りした。 その背後に、羽を巻き散らし、手足を投げ出しながら落下してくるヴォルペガサス。 もはや、そこに力強いマイトは感じない。 その瞳からは、光りが失われている。
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