『第十五話 剣の継承』

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「…んなわけねぇ…!」 拳を握り締め、拳火はヴォルペガサスを睨み付けた。 あの男が、 御剣志狼が、こんなもので死ぬはずが無い。 「こんなもんで終わりじゃねぇだろ!?なぁおい!!」 拳火は身を乗り出し、思わず叫んだ。 「反撃はどうしたッ!!応えろッ!!御剣志狼ーーーーーーーーッツ!!!」 ドッ 「!」 落下していた白金の鎧が、 「あ…!」 不安一色に彩られていた鈴の顔が、喜色に染まっていく。 「…馬鹿な」 カインは驚愕した。 彼の目の前に、白銀の鎧…ヴォルペガサスが二の足で、確りと立っていたからだ。 「貴様…不死身か…!?」 ありえない。 対象を完全粉砕する、必殺のキング・レオ・ブレイク。 それをよもや、三度受けて生きていられる生物が、この地上に存在しているとは。 「…上手く…いった」 生きている。志狼は、拳を握り締めた。 「…何をした…!?」 「受身を取ったんだよ…」 「受…身!?」 先程の、後方に流れる風を利用したのか。 「風のバリアと、後方へのステップで、流れに乗って突進力を分散させたんだ…!」 『単純だが常套手段だろう…!』 「…馬鹿を言うな…!!」 受身程度で衝撃を打ち消せるほど、キング・レオ・ブレイクは生易しい突進ではない。 極論を言ってしまえば、猛スピードで突っ込んでくる大型車両を相手に、柔術家が受身を取ったところで、果たして無事でいられるだろうか。 突進に合わせた、後方へと飛び退るタイミング、キング・レオ・ブレイクの雷の勢いを相殺する、風の展開方向の決定。 どれをとっても、神がかり的な、いや、動物的な勘が必要になる。 それを、見事にやり遂げた。 「流石に威力を全部は消せなかったけどな…」 身体中が痛みを訴えている。もはやどこを故障したのかは、分からない。 それ以前に、 「…!ぐ、あ」 体力は、とうの昔に、底を尽いている。 『!志狼っ!?』 ヴォルペガサスは、相棒の異変に狼狽する。 志狼の膝が一瞬、カクリと折れる。 (…まずい) 確信がある。 ここで倒れたら、もう立てない。 『志狼ッ!!』 自らの意志に反して、前へと倒れこむ身体。 (このまま倒れてちまえば…、楽になれる、か…) 意識も薄れていく。 何か、仲間たちが叫んでいるのが聞こえる。 が、それら全てが、耳を素通りしてしまう。 耳には入ってくるが、頭に入ってこない。 (もう、疲れた) そう、このまま横になって、目を瞑って、思う様眠るのだ。 目が覚めたら、 朝食を作って、 稽古をして、 ボロボロの身体を引き摺りながら、 皆と騒がしく朝食を食べて、 何時も通り、 何時も通り、学校へ…
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