『第十五話 剣の継承』

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「カイン様!!カイン様ぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」 影蝙蝠は、ヴォルガイアーが爆裂四散した場所へと走った。 「っ!!カイン様!!」 暫く周囲を探っていたココロは、目標を捉えたのか、影蝙蝠の額のクリスタルから飛び出ると、ある一点に向かって駆け寄った。 「…」 志狼とエリィは、コクピットから外へと出ると、ヴォルペガサスの掌の上に乗り、その傍へと降ろされる。 そして続々と、ブレイブナイツがその周囲へと集まった。 妖魔達はというと、失意の底にいるのか、全く動きを見せずに一定の距離を保ったままだった。 「…ココロ」 「カイン様!!」 目を閉じていたカインは、顔を覗き込むココロに、表情を綻ばせた。 「…」 「…御剣、志狼…」 そしてその後ろから、複雑な表情でこちらを覗き込む志狼と目が合った。 「!その、身体…」 「…ああ、もう、もたない…だろうな」 志狼は愕然となる。 ヴォルガイアーと同じ箇所、すなわち頭上から縦一閃を中心に、全身が結晶化しており、徐々に徐々に… 砕けては、消えていた。 「今の俺は、『ゴースト』だからな…。実体を持つために、強い憎しみを持続させ、身体を維持していたのさ…」 「そう…だったのか」 言ってみれば、全身がマイトタイトで構成されていた、ということだ。 あの異常なまでの殺意は、今にしてみれば、必死に身体を維持するための物だったのかも知れない。 「1000年間…長かったなぁ…」 「馬鹿だよ…。あんた…!!」 「そうだな…。馬鹿だな…俺は」 自嘲の笑みを浮かべるカインに、志狼は唇を強く噛む。 未だかつて、これほどの強敵はいなかった。 それを、念願適って倒したと言うのに、酷く気分が悪い。 「カイン様…っ!!」 「ココロ…すまなかったね…。辛い役目を押し付けてしまった…」 「いいえ…!いいえっ!!私はっ!私はカイン様がいたおかげで、今こうして生きています…っ!!どれほど感謝をしても、足りません!!」 「そういってもらえるだけで…救われる」 涙を流すココロの頭に、手を乗せて撫でた。 「カイン…!」 「…ブリットか」 友が砕けて消えていく現状に、ブリットは足元がおぼつか無い足取りで近付く。 「貴様…、途中からこういうつもりだったな…!」 「!なんだと…!?」 ブリットの指摘に、志狼はハッとなった。 肯定するように、カインは微笑んだ。 「まさか、この短期間で…俺達全員を倒せるほどになるとは、思ってもみなかった…。  陸丸…拳華…スイ…。お前は見事に乗り越えたな」 「違う…!俺だけの力じゃない…!エリィと、ヴォルネスがいたから!!」 「そうだ…それでいいんだ」 その答えに、むしろカインは満足そうだった。 「ブリット…。己の限界を、己で決めるな」 「!」 「お前には、まだまだ成長出来る余地がある…」 「…上位マイトか」 「お前なら…必ず出来る…。そして、お前にしか出来ない戦い方をするんだ…」 「俺にしか出来ない戦い方…、!」 カインの言い回しに、何かを得たのか、ブリットはハッとなる。 「お前ももう…、ブレイブナイツの一員だな…。どうせなら肩を並べて…、一緒に戦いたかった…」 「…カイン!」 「後は、頼むぞ…」 パキンッ カインの右足が、前触れ無く砕け散った。
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