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「カイン様!!カイン様ぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
影蝙蝠は、ヴォルガイアーが爆裂四散した場所へと走った。
「っ!!カイン様!!」
暫く周囲を探っていたココロは、目標を捉えたのか、影蝙蝠の額のクリスタルから飛び出ると、ある一点に向かって駆け寄った。
「…」
志狼とエリィは、コクピットから外へと出ると、ヴォルペガサスの掌の上に乗り、その傍へと降ろされる。
そして続々と、ブレイブナイツがその周囲へと集まった。
妖魔達はというと、失意の底にいるのか、全く動きを見せずに一定の距離を保ったままだった。
「…ココロ」
「カイン様!!」
目を閉じていたカインは、顔を覗き込むココロに、表情を綻ばせた。
「…」
「…御剣、志狼…」
そしてその後ろから、複雑な表情でこちらを覗き込む志狼と目が合った。
「!その、身体…」
「…ああ、もう、もたない…だろうな」
志狼は愕然となる。
ヴォルガイアーと同じ箇所、すなわち頭上から縦一閃を中心に、全身が結晶化しており、徐々に徐々に…
砕けては、消えていた。
「今の俺は、『ゴースト』だからな…。実体を持つために、強い憎しみを持続させ、身体を維持していたのさ…」
「そう…だったのか」
言ってみれば、全身がマイトタイトで構成されていた、ということだ。
あの異常なまでの殺意は、今にしてみれば、必死に身体を維持するための物だったのかも知れない。
「1000年間…長かったなぁ…」
「馬鹿だよ…。あんた…!!」
「そうだな…。馬鹿だな…俺は」
自嘲の笑みを浮かべるカインに、志狼は唇を強く噛む。
未だかつて、これほどの強敵はいなかった。
それを、念願適って倒したと言うのに、酷く気分が悪い。
「カイン様…っ!!」
「ココロ…すまなかったね…。辛い役目を押し付けてしまった…」
「いいえ…!いいえっ!!私はっ!私はカイン様がいたおかげで、今こうして生きています…っ!!どれほど感謝をしても、足りません!!」
「そういってもらえるだけで…救われる」
涙を流すココロの頭に、手を乗せて撫でた。
「カイン…!」
「…ブリットか」
友が砕けて消えていく現状に、ブリットは足元がおぼつか無い足取りで近付く。
「貴様…、途中からこういうつもりだったな…!」
「!なんだと…!?」
ブリットの指摘に、志狼はハッとなった。
肯定するように、カインは微笑んだ。
「まさか、この短期間で…俺達全員を倒せるほどになるとは、思ってもみなかった…。
陸丸…拳華…スイ…。お前は見事に乗り越えたな」
「違う…!俺だけの力じゃない…!エリィと、ヴォルネスがいたから!!」
「そうだ…それでいいんだ」
その答えに、むしろカインは満足そうだった。
「ブリット…。己の限界を、己で決めるな」
「!」
「お前には、まだまだ成長出来る余地がある…」
「…上位マイトか」
「お前なら…必ず出来る…。そして、お前にしか出来ない戦い方をするんだ…」
「俺にしか出来ない戦い方…、!」
カインの言い回しに、何かを得たのか、ブリットはハッとなる。
「お前ももう…、ブレイブナイツの一員だな…。どうせなら肩を並べて…、一緒に戦いたかった…」
「…カイン!」
「後は、頼むぞ…」
パキンッ
カインの右足が、前触れ無く砕け散った。
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