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「な…!?」
ユマは悲痛な表情で、口元を抑える。
「…」
僅かな間、ユマを睨み付けていたカインだったが、視線を外して溜息した。
「…どうやら何も知らないらしいな…」
「え?」
呟きの意図は読めなかったが、対するカインは、真摯な目をユマに向けた。
「…ブリットを頼む。彼が実力の全てを発揮出来るか否かは…君に掛かっている」
「!は…はい」
今度は、彼が言わんとしている事が、理解出来た。
彼女自身も、課題としていた事柄だからだ。
「…お前達は、三匹目の龍を、早々に目覚めさせることだ」
「「!」」
拳火と水衣は、カインの口から語られた事実に、驚きを隠せない。
「…やはり聞かれていなかったか…。無理もない…。
紫龍を扱うお前達なら分かるだろうが、恐らくは鎧一乗り手に危険が降り掛かる代物だからな…」
「じゃあ、紅麗が何時まで経っても、何も教えてくれないのは、やっぱり…」
確信を持った拳火に、カインは頷く。
「察してやってくれ…。全てはお前達を思っての事だ。
あれはペガサスの前身になった機体でな…。同様にオペレーターが必要なのだが…、扱いが難しく、並みの人間、普通の術者には乗りこなせない…」
「そんな…!」
「心配するな…、素養を持ち、適応しうる術者が、この場には2人もいる」
「!2人…!?」
「っ?」
突如として向けられた視線に、鈴は困惑した。
その視線が、先程まで殺気を撒き散らしていた人物とは思えない程に優しくて、更に困惑する。
ああ、これがココロが心酔するカインの本性であり、志狼と同じ魂を持つ者なのだな、と理解した。
「ココロを宜しく頼む…。普段は切れ者なのだが、君も知っての通り、時折とんでもないムチャをしでかすのでね」
「…」
プイ、とそっぽを向く鈴だったが、僅かに、彼女は頷いた。
バキンッ!
「ッ!」
今度はカインの、左足が砕け散った。
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